FPN-改正薬事法議論:「対決の構図」に持ち込みたい楽天とケンコーコム

改正薬事法議論:「対決の構図」に持ち込みたい楽天とケンコーコム


■メディアとネット 2009-2-27 7:23:00 by RedPen

 政治においても経済界においても「対決の構図」の手法は時代に関係なく一つの手法として重宝されてきました。政治の世界で最もこの手法を活用し、また成功を収めたのは言わずとしれた小泉元首相でしょう。郵政民営化の実現のために規制にあぐらをかく側、その規制を打ち破る側という対決の構図を作り出し、国民を味方につけることに成功しました。



 経済界でも時折見受けられます。この手法を最も意識して使っているのはソフトバンクでしょう。規制に対して徹底的に戦う姿勢を見せ、消費者にとって利便性を損ねているという最大の理由にして最大の武器を持ち、さまざまな規制緩和を実現させました。

 こうした手法は極めて分かりやすい構図で人に対して安心感を与えます。例えば、水戸黄門。決まった時間に決まって悪者が出てきて、しかも決まって成敗されるという一つの「型」。「展開が読めないよね」とドキドキしながら水戸黄門を見る人はあまりいないのではないかと思われます。あらかじめ分かっているストーリーだからこそ、安心して見ることができるわけです。先の読めないサスペンスなどの対局にある作り方とも言えます。

 韓流ブームが起きた背景もこの「対決の構図」が関係していると思っています。日本のドラマや映画は成熟とともに、誰が悪い人、誰がいい人みたいな分かりやすい「対決の構図」をあえて採用しなくなってきていました。ある意味、作り手側が定義をすることなく、視聴者に委ね、考えさせる。そこで生まれるのは「私はあの人の気持ちが分かる」「いや、私は逆にあの人の考え方には共感できない」といった個々の判断に基づく議論です。ただ、一方で受け取り方が異なるコンテンツは、様々な労力を要します。見るときに自分ならではの視点が求められ、またその後の会話においても自分のスタンスを明確にしなくてはならないという負荷です。

 一方、韓国のコンテンツは非常にシンプルでした。例えば、火付け役となった「冬のソナタ」。最初に役者が登場した時点で、誰が主人公で、誰が悪者役が非常に分かりやすい構成だったと思います。こうした分かりやすい対決の構図が、複雑化していた日本市場にある意味新鮮で、かつ気を抜いて受け入れられる要因だったのではないでしょうか。

 ただ、「対決の構図」を用いた手法はときに人々の思考能力を停止させ、また視点を変えれば、決められた公式に消費者を当てはめようとする行為にもつながります。

 2009年2月24日、医薬品販売のあり方などを検討する厚生労働省の「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」の第1回目の会合が開かれました。通信販売規制派、規制反対派の双方によるかなり激しい応酬が繰り広げられたようですが、報道を見る限り、ネット規制反対派である楽天の三木谷社長、ケンコーコムの後藤社長がまさに「対決の構図」を作りだそうとしているのは明らかです。

■Internet Watch 「医薬品のネット販売規制、憲法違反の可能性も」業界団体側が説明会

ケンコーコムの後藤社長「公開リンチにあったようなもの」

■毎日.jp 「市販薬:ネット販売規制、楽天社長が異論−−厚労省検討会

楽天の三木谷社長「なぜネットばかりいじめるのか」

 もちろんたくさんの取材記事がアップされていますが、そもそも同じ会合を取材しているので、だいたい似たようなもの。ピックアップしたこの二つの記事を見ても、「強い集団」「弱い集団」の構図を作り出し、日本人特有の判官贔屓の気質を刺激しているのが見え隠れします。

 とあるインタビューで、厚生労働省の薬事官が「(ドラッグチェーン協会などの)圧力団体による介入を受け入れた規制強化だとおっしゃるが、いったいどっちが圧力団体なのか疑いたくなる」と応えていました。

 個人的に、厚生労働省やネット規制推進派、ネット規制反対派もどちらも国民不在の議論を展開しているように思えます。にもかかわらず、ネットで購入した人で薬害に遭ったといった被害報告、かたや弱い物いじめが許されていいのか?といった主張など、国民の感情面に訴える側面ばかりが目に映ります。

 ネット規制反対派が当初求めていたのは「科学的データ」だったはず。なぜネットで購入することが危険なのか、どれくらいの薬害が報告されているのかといったデータによって証明してほしいというのが主張だったはずです。それがいまや「これまでも売っていたのだから、省令自体が憲法違反だ」という論調に。

 「対決の構図」によってどれだけ消費者の心理面に訴えようとも、ころころとベースとなる欲求が変わると、国民も一気に冷めて見てしまいます。

 焦ろうが何しようが6月には必ず改正薬事法は施行されます。国会で決まった改正薬事法の「3年後まで」という施行日に対して、守らないことこそ法律違反であり、憲法違反です。いまできることは、ネットでの購入=危険という論調を打破するためのデータであり、事実です。ネットでの購入=危険というデータを出せと騒いでも、既にネット規制が盛り込まれた省令が公布されているいま、証明しなければならないのはネット規制反対派です。

 冷静に、かつ、国民を扇動することなく、本当に国民を巻き込んで議論する道を作る。それくらいしかあと3カ月でできることはない気がしています。

RedPen
RedPen / マーケティング
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