FPN-「格差社会」撲滅運動の是非

「格差社会」撲滅運動の是非


■経済・金融・社会 2008-3-31 7:19:00 by brian

「格差社会」なる言葉が登場して久しいです。今後は少数の“勝ち組”と大多数の“負け組”が生まれ、ダブルスタンダードの下に経済格差が拡大していくと言われていますが、ほぼ全国民が“中流”だった日本社会にとっては当然アレルギーが強い言葉であり、ほとんどの人が否定的なスタンスを取っていることでしょう。




しかしもっとマクロ的な視点で観れば、日本は世界の中で少数の“勝ち組”なのであって、年収300万円もあれば世界のほとんどの国では優雅に暮らせます。資源がほとんどない日本がどうしてこのような経済水準を維持しているのかといえば、他国に製造業を中心とした高付加価値な製品やサービスを提供する対価として農産物やエネルギーを輸入しているためであり、恐らく海外から観た日本の印象というのも製造業での強さが目立っていることでしょう。


つまり日本は勤勉な国民性とアメリカを忠実に模倣することによって高度成長を実行し、第二次産業の高付加価値化を他のアジア諸国に先駆けて達成したことによって世界第2位のGDPを誇る経済大国になったのであり、それまでは国民の意識を総中流にして同じ成長ベクトルに向かせることが最大の経済政策でした。ところが第三次産業である金融セクターの未成熟や狭い国土による不動産価値の暴騰によってバブル経済が発生し、その破綻の結果、国民意識を好況というハイテンションに向けられていないのがココ15年間の状況でしょう。


つまり現在の社会状況としては、第二次産業までの生産性が最高水準まで達しているにも関わらず、第三次産業の成長方向性が定まらないために閉塞感が日本経済を覆っているというのが最大の問題でしょう。一昔前にはIT産業が成長期待を集めITバブルが起こりかけましたが、手段でしかないITに目的を課したために、堀江貴文や村上世彰のような時代の寵児を生みながら自滅していった結果となりました。このために生産性を飛躍的に上げる手段としてのITに対してネガティヴな見方が主流となり、十分な投資が行なわれなくなったことが現在の国際競争力にも影響を及ぼしています。


そもそも日本は他国に比べて非常に高い生産性を構築してきたことによって国際競争力を維持してきたわけです。(その辺の話は下記エントリを参照してください)

生産性の話の基礎
賃金水準は、絶対的な生産性で決まるんじゃない。その社会の平均的な生産性で決まるんだ。ここだけ理解してくれれば、本稿の他の部分なんかどうでもいいくらい。念のため赤でも書いとこう。賃金水準は、絶対的な生産性で決まるんじゃない。その社会の平均的な生産性で決まるんだ。


あなたの給料が努力や成果とあまり関係なく決る構造を図解
賃金というのは、次の二つの要因だけで大部分が決まってしまいます。
(1)生産性
(2)参入障壁



世間で言われている「格差社会」に対する処方とは、あらゆる職種の賃金格差を少なくし、社会保障や公共サービスを手厚くすることだという意見が多いですね。そうすると少なくとも“大きな政府”が必要であり、たくさんの税金を払わなければいけなくなります。累進課税を重くすることによって富める者から貧しい者への所得再分配が進み、国民全員が笑顔で住める社会になると主に民主党が理想論を説いています。


ただしこの平等思想が行き過ぎると、高付加価値な生産性を生み出していく分野に携わる経済的メリットが少なくなり、優秀な人材がそのような職種に就かずに低生産性な産業でルーチンな仕事を回していくケースが増えてきます。たとえ昼夜関係なく残業しまくって年収1,000万円を稼いでも、税金で500万円持ってかれれば可処分所得が500万円になるのですから、年収300万円で税金で50万円持ってかれても250万円の可処分所得でのんびり暮らす方がマシだと考える若者が増えるのです。


国際競争力という観点からはこの「格差社会撲滅運動」は非常に危険で、本来国家戦略として優秀な人材と市場からの資金を投入しなければならない成長分野へのリソース投下が阻害される要因となります。

賃金格差の拡大が必要だ
賃金規制は失業率を高めるだけだ。保護貿易によって国内市場を競争から遮断することはできるが、成長率が低下するばかりでなく、保護された産業の競争力が衰えて、長期的にはかえって危険である。知識集約型の製造業や金融を含む広義の情報産業などの付加価値の高い産業に特化して、日本の比較優位を生かすしかない。



私自身がIT産業に従事しているというポジショントークを差し引いても、IT土方やパラダイス鎖国と揶揄されるIT業界の社会的地位の低さは将来の日本の国際競争力を低迷させる要因となり得る危惧があります。いやむしろ、この「格差社会撲滅運動」を推進しているマスコミが学歴などによる参入障壁に守られた高賃金職種だという事実は、その職種が持つ既得権を維持するために産業構造を変えたくないというポジショントークだと言えます。


個人的には、格差社会は必要だと思います。賃金によって職種の付加価値に差をつける方法は、国家戦略を社会構造の中で実現していく、資本主義下の最適解なのです。そのために国家戦略を明確に打ち出す必要があると思うのですが、それも 環境対応=世界に先駆けての環境国家 という最適解が出ています。


つまり、エネルギーや製造業といった社会基盤を担う第二次産業は別にして(というか相対評価にして)、温室効果ガス排出量が少ない製品を作る、環境負荷の少ないサービスを行なうといった独自の指標によって経済メリットのある賃金格差を設けることによって、環境対応の進んだ業界や企業に優秀な人材が集まりさらに発展していくのではないでしょうか。


そうすれば遅くまで電灯をつけて残業したり、暑いのにスーツを着て冷暖房をガンガンつけるライフスタイルも次第に否定されていくことでしょう。ホントに環境格差社会を導入してもらえれば、私なんかはイの一番に仕事の生産性を上げてエコロジーに貢献しますよ!




brian
東 大史 / 株式会社エコブランド
http://ecobrand.jp/



(6180p)
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    スレッド
    投稿者: 未登録メンバー (0)
    投稿日時: 2008-4-1 12:39  更新日時: 2008-4-1 12:39
     「格差社会」議論でいつも感じること
    「格差社会」肯定派は、いつも「格差がなくなればやる気のある人が逃げていく」といい、「格差社会」否定派は、いつも「格差が貧富の差を生み出す」みたなことをいう。またどちらも「かつて日本は格差がなかった」というのが前提となっている。
    だが、かつての日本だって格差はあったでしょ。問題は「格差が広がりすぎること」なんじゃないかな、と思ってる。
    議論はいつも「Black or White」「Yes or No」になりがちだが、この問題の場合は「格差が広がっていくこと」が問題なんじゃないでしょうか。
    返信
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