FPN-「オピニオン・エンゲージメント」の試み

「オピニオン・エンゲージメント」の試み


■マーケティング・PR 2007-5-14 7:12:00 by netmarcom

 タイトルにある「エンゲージメント」とは、本来の語意からすると「何かに積極的にかかわろうとする態度や行動のこと。」または「お互いの絆」という意味もある。
 企業活動の分野では、例えば株主や顧客の意見を経営に役立てるなど、ある課題解決のために「関心者を巻き込み・力を借りること」を「ステークホルダー・エンゲージメント」と言うこともある。



 団体や企業が経済面で貢献するだけでなく、環境や倫理・人権といった点からも責任を果たすこと(CSR)が望まれているが、その有効な取り組み方の一つとして注目されているコンセプトである。



 この場合、参加者は投資家か顧客、参加方法は発言、テーマは企業活動と経営である。しかし社会的な貢献が本来の目的なら、生活者の力を借りる(エンゲージメントしてもらう)のは、なにも経営方針に限らなくても良いだろう。ある社会的な問題に対して、生活者と団体・企業が同じ問題意識を共有しているなら、共に社会貢献活動そのものを行っても良いはずである。



 またマーケティングの分野では、社会貢献を軸に企業・NPO・生活者が参加する仕組みとして「コーズ・リレーテッド・マーケティング(Cause-Related Marketing:コーズマーケティング、コーズブランディング、またはソーシャルマーケティングとも呼ばれる)」が最近注目を集めている。
causeとは社会的な理想、大義のことで、特定の商品・サービスの売上の一部を、社会問題に取り組むNPOに寄付することを明示したキャンペーン/プロジェクトである。
生活者は日常の買い物の中で社会貢献に参加でき、企業は新しい顧客との関わりと収益が見込め、NPOは資金調達が達成できる、というWin-Win-Winの関係づくりを目指したものだ。



具体例としては、乳がんの早期発見・早期診断・早期治療の大切さを伝えるピンクリボン活動を、化粧品メーカーのエイボンが支援している「ピンクリボンキャンペーン」や、アフリカのAIDS撲滅支援にアップルやアメックスが参加した「PRODUCT RED」などが有名。
 この場合、参加者は関心度の高い生活者、参加方法は消費、テーマはもちろん、乳がんやAIDS撲滅である(注:企業のキャンペーンに参加する場合)。いずれもメディアで大々的に取り上げられ大きな成果を上げている。



 しかし、TIME誌も認めるとおりCGM(生活者メディア)の時代なのだから、生活者の参加方法は「消費」に限らなくても良いだろう。



ある社会問題に対して、同じ意識をもつ団体・企業と生活者が協同する。
ただし参加者は、顧客や投資家といった直接のステークホルダーに限らず、関心のある人(オピニオン)ならだれでも、気軽に自主的に協力(エンゲージメント)できる。
参加方法も消費に限らない。上述のとおりブログやSNSなどで、自由に発言していく。
もちろん企業は自社の製品・サービスとPRを通じて、またNPOは本来の活動を行いながら発信していくことで、ゆるやかなリレーションを築いていく。
これにより、より多くの主体者から幅広く発信することで、有効な社会・環境・経済貢献を実現していく「オピニオン・エンゲージメント」といったものが、可能なのではないだろうか。

※造語は本来望ましくないが、適切な用語が見当たらなかったので、このように表現させていただいた。



 小生のような不勉強者が述べるのは甚だ僭越だが、これを色弱者への社会的配慮という今回のケースで考えてみると、



 まず中心となるNPOは「カラーユニバーサルデザイン」を提唱・展開されているCUDOである。CUDOはインタビュー記事にもあるとおり、遺伝・DNA研究の第一人者による研究・主張を根幹としながら、これにとどまらず、さらに正しい知識の啓蒙や、企業製品の検証・アドバイスも含めて、極めて実践的で有益な活動を展開されているNPOである。色弱者のための主張というスタンスからさらに、デザインする側、情報発信する側の視点に立って、カラーユニバーサルデザインというコンセプトを打ち立て実践されているという点が、非常に秀逸と思う。



 また同記事で紹介されている表示機メーカーのナナオは、とりわけ高い映像表示技術で知られる企業である。表示機器の心臓部といえる集積回路の自社開発にこだわり、特に色のコントロールに関しては、非常に優れた技術を持っている。企業の社会的責任(CSR)では、企業独自の技術やノウハウを社会貢献に役立てることが、有益な方法の一つと言われているが、同社が独自の色調整技術を活かし、CUDOの協力を得て、表示機で世界初の色覚シミュレーションを実現したことは、この優れた事例といえるだろう。
 他にもCUDOが協力して、ユーザーとしての色弱者に対応した製品は、リコーやコクヨのオフィス用具や、地下鉄路線図などに広がっている。



 そして、カラーユニバーサルデザインを紹介した記事や、YouTubeに公開された色覚シミュレーション映像をきっかけに、多くのブロガーの方々が、色弱者配慮に関する意見を、ご自身のブログに掲載されている。
ナナオがはてなで実施したキャンペーンへの参加をきっかけにされた方も多いが、もちろん参加や発言内容は、すべて個々人の方々の自由意志である。
繰り返すようだが注目すべき点は、団体や企業と営利的なつながりの無い、さらに顧客や構成員でもないオピニオン・リーダーの方々が、ブログや動画共有などの新しいメディア環境を通じて、問題意識を共有することで、ゆるやかなエンゲージを形成している点である。



ごく一部のオピニオンの方々のブログをご紹介させていただく。



サステナ・ラボ 「どんな風に見えますか?」
Web仕事人の部屋 「カラーユニバーサルデザイン」を考える
日々、とんは語る。 「色弱の利点はないのだろうか。」
buches notiz 「ナナオのディスプレイ」
日々のこと 「カラーユニバーサル。」
Dazzling 「WEBにも取り入れたい、カラーユニバーサルデザイン」
平田百彩の日記 「“色による情報格差”のない社会のために」
雑学 Part2 「色覚シミュレーション」



CSR・デザイン・医療、そしてご自身とご家族の色弱体験。それぞれのご関心・お立場から、実に貴重な、読む人に届くメッセージを発信されている。



詰まるところ、コミュニケーションはどれだけ心に届いたか、行動を促したに尽きると思う。
実際、このようなオピニオン・ブロガーの方々、CUDOやナナオの皆様のエンゲージは、予想以上に大きな反響をよんでいる。



 マーケティング・コミュニケーションの領域では、バズ・バイラルを発生させるには、といった薀蓄が散見されるが、発生させる、といった旧来型の視点ではなく、これからは、ある人の気持ちと団体や企業の想いの共通点を双方向につなげる、エンゲージしていくことが求められるのではと思う。



※筆者コメント:

カラーユニバーサルデザイン」の続き。
 NetMarComの主旨から、団体・企業活動とコミュニケーションにフォーカスして述べたい。



netmarcom
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