依頼の「殺し文句」ベスト10
日経ビジネスオンラインより。
『依頼の「殺し文句」ベスト10』という記事があったのご紹介します。
依頼の「殺し文句」ベスト10それぞれの項目にはちゃんと解説もついているので、気になる人は原文をご覧下さい。
(1)いつもでなくても、「いつもお願いばかり」と言ってみる
(2)依頼がダメなら相談で持ちかけろ
(3)なかなか会おうとしない人には
(4)「できない」の一点張りの相手には“ロミオとジュリエット作戦”
(5)マイナス情報は先に言う
(6)忙しい人に頼む時は
(7)依頼内容に不平や不満を言ってきたら…
(8)困難な依頼の前には、より困難な依頼を持ちかける
(9)連帯意識で引き受けさせる
(10)悪天候を味方につけろ
これを読んで私が思ったことですが。
まずは、なるほどなーと思いました。一理あるな、と。
それから、こういうある種のマニュアル的なものというのはつまり、私が前回書いたような「計算という名の思いやり」的行動と演繹と帰納の関係にあるのだなと思いました。
(1)の解説文は以下のようなものです。
初めて頼む相手に対しても「いつもお願いばかりで…」と言ってみよう。人は常に自分の行動を一貫させようとする心理を持っているため、「いつも」が強調されると「今回も」引き受けなくてはならないという気持ちになりやすい。いつも引き受けているのに今回はやりたくないとなると、それ相当の理由が必要だと感じ、なかなか断れないのである。…なんて狡猾な。と、思う人もいると思います。
この筆者は「殺し文句」と銘打った兼ね合いで、よりそのセリフの戦略性を際立たせようと意図して解説を書いている気がしますが、まあそんな言い回しを差し引いても、結構ズル賢いこと考えるなあ、という感じです。
10項目の中でも特に、
(1)いつもでなくても、「いつもお願いばかり」と言ってみるこの3つは、なかなかしたたかです。
(8)困難な依頼の前には、より困難な依頼を持ちかける
(10)悪天候を味方につけろ
すごいこと言うなあ、とちょっと思いました。
でもやっぱり一理あるかもなあ、とも。
そしてこれらは、いくつかの事例収集(経験)があり、その因果関係を踏まえた上での帰納法からの結論付けなのだろうと思いました。
(8)困難な依頼の前には、より困難な依頼を持ちかけるについての解説文に、以下のようなものがあります。
最初の依頼をあえて断らせることで、相手に罪悪感を持たせることができる。相手は前回断った後ろめたさがあるので、最初の依頼より簡単に見える本来の依頼を、引き受けてくれることがある。これだってもともとは、たまたま前回断られた人に、今回もお願いしたらすんなり引き受けてくれ、「もしかして前回断ったからかな」と思ったところから考えられた原理だと思うのが自然です。
(10)悪天候を味方につけろだって、まず、しょうがなくでも何でも悪天候にも関わらず出向いて行って、「わざわざこんな天気の中ご苦労さまです」というねぎらいを受けてはじめて「ああ悪天候だと相手も負い目を感じるんだな」と思ったわけでしょう。
私が何を言いたいかと言うと。
この「殺し文句」たちは全て、もともとは他意なく行った自然なコミュニケーションの中から抽出された原理だということです。
つまり、たとえばこの10項目を実践するとしても、どんな振る舞いが交渉で有利かとか、主導権を握れるかとかそういう「駆け引き」を思う前に、人と人とのコミュニケーションである大前提を忘れてはいけないんじゃないかなあということです。
多分ですけど。
この10項目を書かれた人は、決して狡猾なわけではなく、洞察力に富んだ思慮深い人なんじゃないかと私には思えます。そうでなければ、こんな風にきちんと理論立てて交渉術を述べることはできない気がするからです。
だけど、この10項目を読んで、その本質的因果関係を深く理解しないままに「イイコト聞いちゃった♪」と額面どおりに実行する人間もきっといて、そういう人は、1度や2度は上手くいっても、きっとどこかで大きな失敗をして人間関係にヒビを入れることになるのではないかなと、思うわけです。
ビジネス社会も、結局は人と人との関係で成り立っていて。でもそのステージが「ビジネス」であるが故に、コミュニケーションの中で生まれる感情さえもが、演繹と帰納を繰り返しながらマニュアル化されていきます。
マニュアルというのは基本的に合理化を目的としていますが、だけど「なぜこうなったのか」という本質を読む者が理解しない限り、そのマニュアルは上手く機能しないはずです。
こんな風に策略を練って、合理的に人を動かすことが悪だとは決して思いません。それでも、核の部分で人間を大事にできない人がいくら表面的な策略を練ろうとも、どこかで必ず関係に亀裂が生じるのではないでしょうか。
最終的には「人」を大事にする人間が勝ち残る社会なのだと。これが私の希望的観測ではないことを祈ります。
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