ネット・コミュニュケーション中心主義で『あっち側の会社』は何を失ったのか?
最近、先進的と言われるITベンチャー企業など情報化の進んだ『あっち側の会社』で色々な面白い現象が起こっています。オフィスがしんと静まりかえっている割には『社員から同じようなアイデアばかり出てきたり、大して良いアイデアが出てこない』と経営者が嘆くケースも増えています。ネット・コミュニュケーションの進む創造性豊かなはずの『あっち側の会社』では、一体、何が起こっているのでしょうか?
IT活用の先進企業では、オフィスに活気が無く、部屋全体が静まり返っていますよね?それならさぞ、創造性に優れた社員が多数育つと思いますが。
関連記事は以下の通りです。
▼ 外出も会話もいらない? ネットと文明 (日経8月17日付)
−狭まる視野、考える葦に試練も−
▼ 『あっち側の会社』は何を失ったのか?
さて梅田望夫さんがおっしゃる『あっち側の会社』は、日本でもグーグルと同じく個々の社員の創造的なアイデアを重視しています。創造的なアイデアの生産には『仕事の割り込み』が最も害があります。何故なら『折角、思いついたひらめきが、割り込みによりクリアーされてしまう』訳ですね。そういえば昔、『仕事の割り込みを禁止したり、業務への集中時間や雑用時間など時間管理を重視するDIPSと言う手法が流行りました。
DIPSによれば仕事の割り込みは大抵、突然、他の社員から話しかけられることにより発生します。
上司 『おい、ちょっといいか?』
社員 『駄目ですよ!!折角、思いついたアイデアが消えちゃったじゃないですか!!』
確かにこんな経験、誰もが持ってますよね。
そのため、『あっち側の会社』では、決められた時間でのプロジェクト・チームの打ち合わせ以外、インスタント・メッセージングなど、ネット・コミュニュケーションを中心として隣の社員とも会話をしています。
その結果、どうなったでしょうか? 一部の素晴らしいアイデアを出す社員を除いては、『仕様から文言までそっくりな案が5つも6つも出てくる』、大学で言えば『明らかにインターネットを写したとしか思えない同じようなレポートが一杯、出てくる』訳ですね。
あれだけネット・コミュニュケーション環境を充実させているのに・・・。(涙)
また、『人間関係が希薄になり、議論から物事を生み出す力が失われる』と言う指摘もあります。これは社会化する力が社員から失われたことを意味します。
これらの点には筆者も日ごろから気づいていました。
朝出社してもお互いに挨拶しない社員、夕方そっと帰っていく社員、組織的な飲み会などが失われていくオフィス環境・・・・一方、会話はインスタント・メッセージングだけ・・。
▼ 全てがマトリックスの世界は幻想
90年代の半ば頃、サンドラ・ブルック主演の『インターネット』と言う映画が流行りました。地域社会から孤立して、アパートにひっそりと暮らし、全ての仕事や社会交流をネット・コミュニュケーションで行う美人女性の物語です。彼女の暮らしには対面の世界が殆どありません。
これを極端にすると物理的な世界が滅んだ跡のイメージの世界を描いた映画『マトリックス』の世界が出来上がります。
もっと昔の話をすれば、グリム童話の中に『ラプンチェル』と言う物語があります。
ラプンチェルはグリム童話に出て来る金髪お姫様の名前です。彼女の母親が妊娠中に隣の魔女の庭にたっぷり生えているラプンツェルを食べたくて食べたくてたまらなくなったので、父親が塀を乗り越えてそのラプンツェルを何度か盗みに行きます。しかしそのうち父親は魔女に捕まり、ラプンツェルの代わりに産まれて来る赤ん坊を引き渡すことを約束させられ……という有名なお話です。ラプンチェルは魔女により塔の先端で育てられました。
そして年頃になった所でイケ面の王子様が塔に登ってきて、ラプンチェルを救い出し、めでたしとなっている物語です。
ここで不思議なのは『ラプンチェル』は一生を塔の先端で暮らしており、イケ面の男の子など全く見たことも聞いたことも無かったはずです。だから王子様が突然、尋ねてきてラプンチェルにデートを申し込んでも男女関係が上手くいくはずがありません。
だってデートと言う『社会的スキル』を彼女は身につけていないんですよ!!そらあ無理ですよ!!
ネット・コミュニュケーション中心主義や映画のマトリックスの世界に欠落している点もこれと同じです。
社会学者のクリス・アンダーソンは近代国家を『想像の共同体』と呼びました。これは『われわれの世界とはそもそもイメージの世界』を意味します。
お互いに直接、顔も見えないネットの会話、本物の店舗に似せた仮想店舗、動物の森やMMORPGのようなゲーム、こう言ったイメージの世界が成立するためには、その後に『豊かな対面の世界の経験』で身につける社会的スキルやイメージ力が必要であると考えられます。
▼ アイデアとは物理理的経験、体験が醸成するイメージ力
名著『アイデアの作り方』の著者、ジェームス・ウエッブ・ヤングは『新しいアイデアとは既存アイデアの組み合わせ以外の何者でもない!!』と主張しています。
この考え方は認知心理学やフロイト派などからも支持されています。
判り易く申し上げれば、創造的なアイデアを作るとは、既存の情報や知識を集めて加工する、その上に実態的な経験を積み上げてアイデアの発酵を待つという方法論を意味します。
この実態的な経験を積むと言うところが最近『あっち側の会社の社員』には欠落しているんですよね。
そもそも『あっち側の世界』と言う斬新なアイデアはどのようにして誰が作り出したのでしょうか。社会学上はサイバーパンクと言われる小説世界の走り、『ニューロマンサー』(ウイリアム・ギブソン著、1984年)が、人類の『あっち側の世界』を描いた最初であると言われています。
『あっち側の世界』とは『こっち側の物理的世界』を背景に成立するイメージの世界であり、『こっち側の世界』の一つの側面をイメージアップしてシャープに仕上げたものでしかありません。と言うことは『こっち側の世界』が滅びれば 『あっち側の世界』は自然に消滅します。
だから昔、米国大手小売店、ウオルマートのバイヤーはデータウエアハウス上の売上げ数字を見て顧客のイメージを思い浮かべる際、暇があれば何時も物理的店舗を訪問して買い物の雰囲気や顧客の様子をピックアップして(実体験して)いたと言われています。
▼ ネット・コミュニュケーション中心主義を物理的世界の体験と組み合わせよう
筆者もネット・コミュニュケーション中心主義は大好きです。時間やコスト効率は良いし、欲しい情報は大抵、直ぐに入手できます。しかし、優れたネット・コミュニュケーション中心主義者は同時に対面イベントも大切にしています。
オフ会、対面での研究会、飲み会、素晴らしい料理やワインの味わい、トレッキングと呼ばれる山歩き、物理的な相手との恋愛など豊かな体験を背景とし、ネット・コミュニュケーションと上手く組み合わせれば『あっち側の会社の社員』にも優れたアイデアが生まれ出てくるでしょう。
研究会などで色々な人々と出会いがあり、刺激になるでしょ? これがアイデアの基になります。またその為には日ごろから社交力=社会的スキルを磨いておきましょう!!
あっち側の会社の社員に欠けた創造力を甦生しよう!!

![]() ![]() | 山崎秀夫 / 日本ナレッジマネジメント学会専務理事 http://echoo.yubitoma.or.jp/weblog/h-yamazaki/ |
■あなたもFPNニュースコミュニティに記事を投稿してみませんか?
→記事の投稿方法についての詳細はこちら
| スレッド |
|---|
| 投稿者: 未登録メンバー (0) 投稿日時: 2006-8-19 9:43 更新日時: 2006-8-19 9:43 |
|
トラックバック: 「不愉快を君に」が出来るまで。
おまーっ(略) たぶん押忍という言葉はおはようが・・・・何だ!デジャヴ!? というわけで休みなになると早起きする小学生みたいな僕なんですが、昨今の小学生は元気が無いなぁと思うんですよ。なんだか死んだ魚みたいな目をして、疲れたサラリーマンのように道を往来する姿をよく見ます。 で、ここに何となく答えが書いてありました。 http://www.future-planning.net/x/modules/news/article.php?storyid=1648 ああ、子供達も、ベ... |
|
|








